· 

読書メモ:感情と適応

面接などでうまくしゃべれないのは、進化上ある程度仕方ないものだと考えれば少しは気が楽になるかな…?

-----------------------------

感情は環境へ適応するために、進化の過程を通じて獲得されてきた心の働きとする、新しいとらえ方に変わってきている。

 

感情は不測の事態に最も合理的な行為へと生体を瞬時に突き動かす役割をもっており、例えば恐怖という感情は、太刀打ちできない敵の出現などの事態が予測されるとき、まず「逃げる」という行動に生体を有無をいわさずに駆り立てる。このような感情があるおかげで、ためらうことなくすみやかに逃げるという適応行動をとることができる。

また、協力から生じる喜びは次の協力行動へ、恥は社会的規範から外れた行為を回避する方向への動機づけを高めることによって、適応的な社会環境を作り上げることに役立っただろう。

 

感情システムは、その状況において適切な対応への準備状態を作り出し、人間の生存をおおいに助けたと考えられる。ただ、今日の文明化した環境では、必ずしもつねに感情が適応を作り出すように働くとは限らない。

 

原始社会では見知らぬ他者はおおかた外集団であり、敵である可能性が高かったから、見知らぬ他社に出会って緊張し身構えることは適応的であった。だが、今日、親睦パーティーで初対面の人に対して後込みしたり、採用面接官の前で緊張のあまり何も考えられなくなったりするのは、適切な行為とは言い難い。

 

感情がしばしば認知を妨害するものと見なされているのは、適応すべき環境が変わってしまったのに、心の設計図は必ずしもまだそれに十分対応できるようになっていないことが関係しているかもしれない。

-----------------------------

・心理学 新版(有斐閣):https://amzn.to/2OPNap0