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メモ:意識はどこから生まれてくるのか(あとがき)

『意識はどこから生まれてくるのか』のあとがきをまとめたものです。

・ヨハネス・ミュラー(1801 - 1858)
 ・生物が「非物理的な要素をいくつか含んでいる、あるいは無生物とは異なる原理に支配されている」と考える
・ヘルムホルツ、ブリュッケなどミュラーの弟子たちは反対
 ・「生物の内部では、一般的な物理的・化学的な力以外の力は作用しない」
・ジークムント・フロイト(ヘルムホルツらの弟子)
 ・ヘルムホルツらの考えに基づいて、心の自然科学を確立しようとした
 ・精神生活を「特定可能な物質的諸部分の量的に決定された状態」に還元することができるような科学を確立しようとした
 ・しかし、当時はその方法がなかった

・1994年、フランシス・クリック(生物学者)
 ・「あなたは、つまり、あなたの喜びや悲しみ、記憶や野心、個人的アイデンティティや自由意志の感覚は、実際には、膨大な数の神経細胞とその関連分子の集合体の振る舞いにすぎない」

・デイヴィッド・チャーマーズ(哲学者)
 ・クリックの意識の神経相関物の探求は「イージー」な問題
  ・因果関係ではなく相関関係の問題
  ・意識が「どこで」発生するのかを説明はできても、「なぜ、どのようにして」発生するのかは説明できない
 ・チャーマーズの「ハード」な問題
 ・「経験の主観的な質はなぜ、どのようにして客観的な神経生理学的現象から生じるのか」
  ・「経験のそれであると感じられるような何か」を中心に展開
  ・「生物が意識的な精神状態を持つのは、その生物であると感じられるような何かがある場合、つまり生物にとって感じられる何かがある場合に限られる」

・客観的なものが主観的なものをどのように生み出すかと問うことは、必要以上に問題を難しくする可能性がある
 ・客観性と主観性は観察の視点であって、原因と結果ではない
 ・生理学的現象と心理学的現象は、単一の原因に還元することはできるが、一方を他方に還元することはできない(例えば、雷光も雷鳴も根本原因は電気であり、雷光が雷鳴を生み出すのではない)

・私たちは通常、生物的現象の根本的な原因を「機能的」な用語で記述する
 ・さらに、機能的メカニズムは自然法則に還元することができる
・が、チャーマーズは「視覚の機能的メカニズムでは、見るとはどのような感じがするかを説明していない」と指摘
 ・視覚が内来的に意識的な機能ではないから
 ・視覚機能の遂行には、何かのように感じる必要はない
・知覚は、知覚されるものに対する気づきがなくても容易に起こり、学習は、学ばれることに対する気づきがなくても行われる
・「なぜこれらの機能の遂行には経験を伴うのか?なぜ、これらの情報処理はすべて『暗闇の中』で、内的な感じのないところで行われないのか?」(チャーマーズ)
・科学がこの疑問に答えられないということは、意識が宇宙の通常の因果的な母体の一部を形成していないという可能性を提起する

・チャーマーズの疑問は、すべての認知機能に対して合理的に問える可能性があるが、感情機能に同じことは当てはまらない
 ・感じを感じることなく、どうやって感じを持つことができるのか?
 ・なぜ、どのようにして感情が何かを経験する原因となるのかを説明せずに、感情の機能的なメカニズムを説明することなどできるのか?
・「感情の本質は、それに気づいているはずだということ、つまり、意識に知られるようになるはずだということである。したがって、無意識という属性の可能性は、情動、感じ、感情に関する限り、完全に排除されることになる」(フロイト)

・大脳皮質の機能が意識を伴うのは、脳幹上部の網様体賦活系によって「その能力を与えられた」場合に限られることを観察するのは、非常に興味深いこと
 ・この領域に2立方ミリメートルの損傷を与えるだけで、すべての意識が消える
 ・多くの人は、脳幹が意識の量的レベル「目覚め」を調節しているからだと考えるが、この見解は支持できない
 ・脳幹上部で生成される意識は、それ自体が質的な内容を持っている
  ・これが感情
 ・大脳皮質の意識は脳幹の意識に依存しているので、感情は意識の基礎的な形態であることが明らか
 ・感じることのできる主体は、文字通り、感情によって構成されている

・感情とは、拡大された形のホメオスタシスであり、自己組織化によって自然に生まれた生物学的な基本メカニズム
 ・自己組織化するシステムが生き残るのは、限られた状態を占有するからであり、自らを分散させないから
 ・この生存のための必須条件が、次第に、意図性を支える複雑な力学的メカニズムの進化へとつながった
 ・重要なのは、自己組織化システムの自己という性質が、それらに視点を与えるということ
  ・だからこそ、そのようなシステムは主観性を語ることが意味をもつ
 ・存続可能な状態からの逸脱は、システムによって、システムのために、欲求として登録される

・感情は生物学的欲求を快楽的に評価する
 ・ホメオスタシス的な定常点からの逸脱(予測誤差)が大きくなると不快に、小さくなると快に感じられる
・欲求の各カテゴリーは、非常に多様で、それぞれ独自の感情的な質を持ち、それぞれが生物を生存可能な範囲に戻すと予測される動作プログラムを誘発する
・感情状態に対する意図的な反応は、生まれつきの反射や本能の形をとる
 ・効果の法則に従って、経験からの学習によって徐々に補われていく
・生物が自らの欲求の変動を感じることで選択が可能となり、それによって、予想外の文脈での生存が可能となる(経験の生物学的機能)

・欲求は一度にすべてを感じることはできない
 ・中脳の決断トライアングルによる優先づけがなされる
・決断トライアングル
 ・中脳水道周囲灰白質に収束する現在の欲求(自由エネルギーとして定量化された残留予測誤差)が、現在の機会(上丘にある二次元の「顕在性マップ」の形で表示)との関係で、ランク付け
・条件付けされた動作プログラムが誘発され、そのプログラムは予測の深い階層を経て、予期された文脈で展開する(拡大した前脳の生成モデル)
・優先づけされた感情によって生成された動作は随意的なもの
 ・事前に確立されたアルゴリズムではなく、今ここでの選択に従う
 ・このような選択は、外受容的な意識の中で感じられ、感情に文脈を与える
・選択は、優先された欲求によって目を引くことになった入力誤差信号の、変動する精度の重みづけ(覚醒、シナプス後の感度)に基づいてなされる
 ・その間、ワーキングメモリーに移されて、その欲求を満たす方法に関する現在の予測の不確実性を最小化する(信頼度の最大化):再固定化
・「意識は記憶痕跡の代わりに生じる」(フロイト)

・確実に成功した選択は、感覚運動予測の長期的な調整につながる
・外受容的な意識は進行中の予測作業である
 ・欲求がどのように解消されるかについて、より深い(より確実な、より意識的でない)予測を確立するため
・「陳述型」から「非陳述型」の記憶システムへの移行には、一般化を促進するために予測モデルの複雑さを軽減する必要がある
・私たちは自動化、絶対的な信頼度を目指しているが、完全に達成することはできない
 ・失敗した分だけ、感じに苦しむ
 ・(すべてがうまくいっているときの)デフォルトの欲動はSEEKINGとなる
  ・事前に解決するために不確実性に積極的にかかわる
 ・この感情が優先されると、世界に対する好奇心や興味として感じられる

・以上が意識の因果的メカニズム
 ・意識が神経学的に出現すると同時に心理学的にも出現する因果的メカニズム
 ・根本的な機能は、自然法則に還元できる(フリストンの法則など)
 ・これらの法則は自己組織化を支える
・エントロピー(忘却)に積極的に抵抗することが、どのように、なぜ何かを感じることになるのかを説明できる

・意識を持つ既知のシステムはすべて生きているもの
 ・しかし、すべての生きているシステムが意識を持っているわけではない
・すべての生きているシステムは自己証明的
 ・しかし、すべての自己証明システムが生きているわけではない
・原理的には、人工的に意識のある自己証明システムを作り出すことができるはず
 ・意識は生み出すことができるはず
・その前にこのようなことを行う動機を問い直し、悲惨な結果になる可能性があることに連帯責任を負い、細心の注意を払って進まなければならない

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