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状況倫理学④

友人から下の記事の紹介があり、「状況倫理学」というものを思い出したのでまとめています。

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『「なぜ道徳的であるべきか?」――永井均『倫理とは何か』(ちくま学芸文庫、2011年)より 』

https://note.com/free_will/n/nf359715e76cd

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■状況倫理学の諸思想
グリーゼバッハ
・倫理的要求のすべての普遍的規定に反対
 ・倫理的秩序は決して繰り返されることのないそのときどきの「現在」としての瞬間の中で、またその瞬間からのみ把握される
 ・倫理的要求を根拠づける‘唯一’の内容は、自分と異なる他者としての「隣人」との出会い


ギュスドルフ
 ・人間を既成の秩序に服従させる古典的倫理に反対
  ・古典的倫理が人間における決定の自由と独自の自己実現の可能性を阻害するというのが理由
 ・自己の本性の深い要求に従うという意味での自己自身への誠実さの中に道徳性が存在すると主張
 ・このような意味での倫理的経験は個別的であるから、決して普遍性や客観性に達することはできない
 ・人間が状況の多様性の中で下す自己の決定を評価する基準は、われわれの全人格的な願望に対する満足ということを置いて他にない


ミュラー
 ・自由とは選択における決断
 ・本質倫理学においては、われわれが瞬間ごとにそのつど何を選択すべきかということがあらかじめ存在の秩序についての認識によって一義的に決定されてしまっている
  ・より高き価値、より高き目的を選ぶべきだとされる
  ・そこにおいては人間の自由の意義が見失われている
 ・キリスト教的倫理の根本格率は、より高いものを選べということではなく、「汝の隣人を愛せ」ということ
  ・隣人や最も近いものなどはすぐれて歴史的なカテゴリー
・客観的な秩序のヒエラルキーや主観的な能力の基準というような非歴史的なもので計ることはできない
  ・他ならぬ“いま・ここ”におけるこの“わたし”にとっての歴史的状況の中で聞こえてくる呼びかけによってのみ示されるもの


ニーバー
 ・目的論的倫理学:「わたしの目標、理想ないし目的とは何か」と問う
  ・「善さ」を追求し、最高善に正しさを服従させる
 ・義務論的倫理学:「法とは何であり、わたしの人生における第一の法とは何であるか」と問う
 ・善よりも「正しさ」を優先
 ・責任論的倫理学(ニーバー)
  ・決断と選択とのあらゆる瞬間において「何が起こりつつあるのか」と問い続けることによって倫理的問いに答えようとする
  ・「応答としてまた次の応答の先駆けとして、全体の相互作用に適合する“適切な”行為」を問い求める
 ・「適切さ」
   ・「善さ」および「正しさ」を包括するものと考えられる
  ・「責任を負う自己という立場」
  ・「責任性」という理念の中に、「応答」「解釈」「予期」「社会的連帯性」という4つの構成要素が含まれる


慶応義塾大学『現代倫理学の諸問題』より「状況倫理学」のまとめ

参考動画